喪服は誰が着る?


 最近の私は冠婚葬祭の中でもお葬式に行く機会が多くなってしまいました。私は通夜でも告別式でも出来るだけ着物で行くようにしていますが、不思議なことに着物姿というだけで、業者の方にご親戚かお身内の方のお席に導かれてしまうことが一度や二度ではありません。
 一般にお参りをする方が、それほど着物を着て行かないので、身内と間違われてしまうのでしょうか。

 ご遺族はさすがに喪服を着ていらっしゃることが多いのですが、参列者の着物姿は残念ながら年毎に見られなくなりました。それゆえに先日、若い方にこんなことを言われました。
 「黒の喪服って身内の方だけしか着てはいけないのですか?」と。私は驚いてしまい、「とんでもない、仏事の正式な装いは喪服だからどなたが着てもよいものです」と答えましたが、いくら着物を着なくなった時代とは言え、こんな風に思っている若い方がいるなんて、、、と少なからずショックでした。



黒の喪服は親族だけのものではありません


 考えてみれば、喪服姿で参列している方は、ほとんどいないのが現状です。つまり故人の知り合い、友人など、一般の方々の立場で、喪服姿は珍しくなってしまったのです。私がお通夜や告別式に喪服姿で行った時に、着物は私だけだったと思いながら帰路に着くことが、この頃多いのです。
 最近は喪主が奥様でも洋服姿でいらっしゃることをお見受けすることがあります。そんな時私個人としてはちょっと寂しい気持ちになります。

 それぞれ色々な事情があるでしょうが、どうして日本女性はこんなに喪服を着なくなったのでしょう。
 私は亡くなられた方に対して、その故人と面識がなかった場合でも出来るだけ礼をつくして着物姿でお送りしたいと心がけております。
 確かに着慣れない方には面倒ですし、ぱっと着られる黒の洋服の方が、お出かけになるには楽です。
 しかし合理的に簡単な事ばかりが全てではない気がするのです。別に洋服姿が礼をつくしていないと言っているつもりはないのですが、喪服姿があまりにも少なくなってしまったのは、やはり日本人が持つ心の問題として、気になるところです。



日本人女性として...


喪服 少なくとも現在、50代になられた方々は昭和の時代に結婚されている方が多いはずです。この時代のお嫁入りの支度としては、何はなくても喪服の夏物、冬物を揃えられる方が大半です。ご自分の喪服をお持ちではありませんか。
 喪服はごく身内の時にだけ着るためのものではありません。仏事の時の礼装なのですから、もう少し着る機会を増やし、例えばご主人様の関係、友人の為、尊敬していた方の葬儀など亡くなられた方に、日本人女性として着物で礼をつくしてみてはいかがでしょう。
 私は喪服を着ている時に故人への思い、感謝やらご遺族の深い悲しみを思いつつ自分の心を整えて、着終わる頃には身が引き締まって行くのを感じます。

 わざわざ作らなくてもお持ちの喪服を着ることを面倒に思われない様にして頂きたいのです。
 喪服を着なくなったのですから、通夜の時、仏事の時の着物の在り方などは推して知るべきですが、通夜の装いや法事の装いについては、いつかまた具体的に述べたいと思います。

 喪服は身内の時だけ着るという間違った考えをお持ちの方がいらっしゃいますので、今回はあえてこの話題だけに絞って述べてみました。

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