丸帯を探そう!
帯には色々な種類があります。中でも袋帯と名古屋帯が最も多いでしょう。でも、戦前までは丸帯も沢山あってお嫁入りの支度にはどなたも丸帯を加えてあったものでした。
丸帯以外は帯の数には勘定されなかったとも聞いております。それほど帯といえば丸帯しか考えないという時代が続いていました。
丸帯とは
丸帯と袋帯の違いはどこでしょうか。袋帯は帯の表皮と裏側とが張り合わさって1本の帯になっているのに対し、丸帯は帯巾の倍の幅で織られていますから、その幅を半分にして仕立てられています。
従って、片側は縫い目が無く輪になって出来ていますし、表も裏も同じ織りとなります。
解いて開けば帯巾の倍の幅に戻るのです。そして柄は全面に織られています。現代の袋帯のように柄止まりは無くて無地の部分もありません。
最近はこのような丸帯を見かけることはありません。どうして無くなったのかは、おそらく重たいしコストもかかるからではないかと考えられます。それで、より締めやすい現在の袋帯が主流となっているのです。
(90年程前の絽の丸帯)
丸帯を活かす
私の所に、アンティークの丸帯が良く持ち込まれてきます。立派だし何とかならないかという相談です。
古いお宅では、お母様がお振り袖の時に使われたもの、お祖母様がお嫁入りにお持ちになったものなど、何十年の時を経て日の目をみる丸帯があります。現代にはない織り柄もあり、捨てがたい雰囲気です。
とても素敵なのですが、このままで締めるにはいろいろな問題点があります。
まず古いので汚れていたりカビ臭かったり、積んであったので強い皺が出来ていたり、湿気のため縮んでいたりしています。
ここまでは見た目の状態ですが、次に使用出来ない理由があるのです。
それはまず全体の長さがいまの袋帯よりかなり短いのです。二重太鼓に結ぶのには20cmから30cm丈が足りません。それからとても重いのにくたくたしています。
(70年程前の婚礼など
に使用された丸帯)
帯芯の性が抜けているので帯全体の張りが失われております。さてこれらの現状を踏まえて丸帯を現在に使用出来るように作り直してみましょう。次はどのような手順でとりかかるか箇条書きにしてみます。
丸帯の再生
- 古い丸帯の全体の総丈を計って見る。両端の痛み具合、帯地の汚れと痛み具合を調べてみる。
- 解いてみる。解くと帯巾の倍になるが、1枚の生地なのでどちらの面がよりきれいか確かめておく。
- 生地の真ん中を縦に裁断して2分する。洗いに出して綺麗に地のしをする。
- それぞれの生地がきれいになったところでもう1度長さを測り、どちらか良い状態の方を主に袋帯に使うことに決める。
- 袋帯の裏に使用する裏地を求める。表の生地の色に近い色の裏地にする。 裏地を手に入れたら長さを測る。
- 裁断して綺麗になった丸帯のほうの長さと裏地の長さを合わせて、どの位、足りないか不足分の長さを調べておく。
- 不足分の長さを、もう一方の丸帯の生地から裁ち、袋帯に作る方にまわして裏地と同じ長さに整える。
- 袋帯として仕立てに出す。その時、表に足す生地をどこに接ぐかは仕立屋さんと相談して、帯を締めたとき見えにくい場所にしてもらう。
これでようやく1本の袋帯が出来上がるのですが、半端に残ってしまった丸帯の残布はどうしたらよいでしょう。
丁度、名古屋帯の表分の生地の長さがあるはずなので、かえりから裏に回る不足分の用尺、約三尺を調達してくれば立派な名古屋帯が完成します。こうすれば2本の帯に甦ります。
探してみよう
以上のべたように丸帯がタンスの下に眠っていたり、お蔵のなかに仕舞われていたら粗末にしないでどうか再利用してください。この頃は、古い丸帯が骨董市で売られたりしていて、可哀想な気がします。
また、インテリアとしたり、和風モダンのテーブルコーディネートにして丸帯のままテーブルに敷かれていたりするのも見ますが、実際にはこんな事は一般の家庭では使えないと思います。
やはり帯として生まれてきたのですから帯として甦らせてあげたいのです。古いお宅や旧家には必ずあるはず、処分に困っていられたら喜んで貰ってあげて下さい。
今は昔のような丸帯の柄はなかなか織ってはおりません。いま作れば大変な金額になるでしょう。決して捨てないように願います。
参考までに
丸帯の長さ・・・・・・1丈1尺前後(4メートル前後)
現代の袋帯の長さ・・・1丈2尺前後(4メートル50cm前後)
丸帯を再生して1本の袋帯と1本の名古屋帯を作った場合の合計の費用は、6万円から7万円ぐらいでしょうか。
このくらいの費用で、2本の帯に生まれ変わるのなら考えてみる価値はありそうです。埋もれている丸帯をぜひ発見してみてください。