ピッタリ夏襦袢


 着物好きにとって嬉しくもあり大変でもある夏の着物。表地の着物の事ではなくてその下に着る長襦袢について述べてみましょう。今回は地味なお話ですが、非常に大切なことです。
 単衣から薄物にかけては下の長襦袢は袷の着物の時の長襦袢より気を使います。中でも薄物の着物を着用するときは特に気をつけなくてはなりません。それでは、夏の長襦袢を着るときの注意点と種類に絞って話しを進めて行きましょう。



注意点とは


 まず、夏の着物は薄いので透けてしまうことを、何より前提に考えておかなくてはなりません。
それ故に一番に注意する点は長襦袢の着丈です、そして袖丈です。
 上に着る着物にピッタリと合っていないととてもおかしいのです。透けてしまいますから着丈の短い長襦袢だと上に着ている着物と段差が見えてしまいます。 袖丈もピッタリ合っていないと透けてしまいます。夏の着物は軽いので長襦袢の袖が短いと飛び出してしまいます。
 夏は着物も襦袢も軽いのでお互いが良く添うためには寸法が合っていなくてはなりません。ですから正確な着物の寸法を、仕立てる方に伝えることが重要です。
 長襦袢はいつでも着物に準じて仕立てる方が割り出します。出来れば着物と襦袢は同じ方に仕立ててもらうのが理想的なのですが、いつもそのようにはならないと思われます。
 長襦袢だけを仕立てに出す時は特に着丈と袖丈に注意をしてください。これが夏の着物姿を綺麗に見せる秘訣でもあります。



材質のいろいろ


夏の長襦袢にはどういうものがあるでしょうか。材質と特徴について述べていきます。まず、もっとも一般的で多いのは絽の長襦袢でしょう。ほとんどの夏の着物に合わせられます。

紋紗 夏襦袢の生地
   (紋紗:地紋のある夏襦袢の生地)

 絽より涼しげな紗もあります。白地が多いのは上に着る着物に響かないためです。中には淡く染めたものもあります。
 そして上布や麻の着物の下には麻の襦袢が用いられます。麻の襦袢は皺になりやすいのが難点ですが涼しいです。

 それから多いのは化学繊維で作られた夏用の襦袢です。これは夏には汗をかくので洗えることを考えての襦袢です。大変に便利ということで広まっていますが、私の経験では正絹の持つ特徴を追い越すほど快適かというとなかなかそうはいかないのです。


 汚れたら洗濯機でも洗えるというのは魅力ですが、汗の吸収、風通し、裾捌きの良さ、涼しさを考えるとどうしても正絹の方が勝ってしまいます。
 どれを選ぶかは着物の種類にもよります。最近では洗える正絹の襦袢も出てきました。
 長襦袢に付ける半衿も正絹と化学繊維では暑さの感じ方も違う気がします。着物の格によって長襦袢を決められるのも一考と思います。

 尚、夏の襦袢のお手入れは必ずするようにして来シーズンを気持ちよく迎えましょう。少々、気の張る夏の着物のことですが、着物姿がまたとびきり美しいので長襦袢に注意をしてお召しになってください。

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