小紋のお出かけ場所
小紋はどこの場所まで着て行けるのか、という質問をよくされます。小紋を着る範囲は随分と広くて種類によっては、純式服となる場合もあります。
今までのレクチャーでも、小紋については何度か取り上げて参りましたが、今回は改めて、小紋の種類も具体的に取り上げながら、小紋のお出かけ場所について、もう一度まとめておきたいと思います。
江戸小紋
まず何と言っても小紋と言えば江戸小紋と思い浮かぶほど有名な小紋です。そしてこれほど便利な小紋はありません。
とても細かい型紙で染められていて、遠くから見ればまるで無地のように見えますから、無地染めの着物と同じように考えられます。どんな帯ともあわせやすく帯によって表情が変わるのが特色です。江戸小紋は1枚はあれば重宝です。
抜き紋、または縫い紋をいれておけば、全く紋付きの無地と変わることなく準式服として着ます。お茶席や祝儀不祝儀のときなど、あらたまった場所に着て行くことが出来ます。
昭和40年代には、とても流行って誰でもが1枚位は誂えたので、今でもタンスに眠っているかもしれません。
柄としては面白いものもありますが、一般的には鮫柄の鮫小紋と言われている物が圧倒的に多いです。そのほかには「家内安全」とか「万筋」や「行儀」と言われる柄があります。
紋を入れなければ遊びとしても洒落ていて、粋な感じに装うことが出来ますから染帯など洒落た帯で趣味的に楽しむ場に着れば、いかにも着物を着慣れた雰囲気で素敵です。
このように紋を入れて袋帯ならばかなり正式な場所で、そして名古屋なら趣味的な楽しい場にと広く使えますから便利といえましょう。
(黒地の極鮫)
(紺地の花菱)
(黒地の万筋)
型小紋
型小紋は、型染めで、それらの柄には多くの種類があります。柄としては上下がなくて草花がモチーフになっていたり自然界の様々な模様があります。鳥や波や水模様や風景などがあり、ひとつの型が1反のなかにくり返されて染められています。びっしりと混んだものもあれば飛び飛びの柄もあります。
以前は着物を染め変えたりするときには、柄の混んだものを型染めにして貰えば元の柄が分かりにくくなるので、そんな柄見本が豊富とありました。
着物をよく着ていた時代には柄が派手になったり飽きたりすると紺屋さんといわれる何処の町にもあった染物屋さんで頼んで染め変えたりしました。
表から見えるウィンドウには柄の見本を1反の中にいくつも分割して外から見えるように掛けていたお店が沢山ありましたが、今はほとんど見かけません。
このように型小紋は、新品であれば色も鮮やかで生地も良いですから着て行くところもちょっとした集まりやお洒落にお芝居などのお出かけに着ますが、染め変えたりした物はお稽古着や街着として着分けるのがよいでしょう。
着物を着る頻度が高ければ、それだけ色々な場所に着て行くのですから型小紋でも高価な物や
新しいものはよそ行きとして、染め変えたものは普段着として自然と着分けることになります。
このように様々な柄、様々な素材で型小紋は存在します。また地方独特な型小紋もあり、京友禅の小紋や沖縄の紅型小紋はその代表的なものです。
(セピア地の型蝋)
(納戸地の花柄)
(茶地の格子模様)
手描き小紋について
その他にあるのは創作小紋としての手描き小紋でしょう。これらは全面的に型を使わず手描きにより染められているもので、価値の高い物です。
ほとんどが一品制作であり、大変に手の込んだ作品が多く作家物に良くあります。繰り返される細かい柄は上下がないのもありますが、上下があきらかにある柄は裁つ場所毎に柄が振り分けられて始めから染められているので、「振り分け小紋」とも呼ばれます。
手描きで作られてれている小紋については、かなりよそ行きとして贅沢な小紋となるので、訪問着に準ずる着物として考えられます。
観劇やパーティ、新年会や祝賀会、など様々な場所に着て行くことが出来、時には軽い付下げや訪問着より豪華で個性的に見えます。特に着物が好きで着る機会が多い方々には着ていく場の広い着物となるでしょう。
(赤地の桜模様)
(黒地の蝶の重ね模様)
(ひわ地の薔薇模様)
小紋の種類毎に述べて見ましたが、このように普段着からよそ行きまで、色々な場面で小紋は着て出掛けられます。ある意味では付下げや訪問着のように制約はないので、小紋の材質や柄などの持つ性質に合わせて着て行く場所を考えてみましょう。
楽しく個性的に装えるのが小紋でもあります。また袋帯や名古屋帯によっても変わりますから出掛ける場に合わせて考えてみましょう。