七歳の祝着は長く着る
七五三の祝着の中でも、ここでは特に七歳の祝着に絞っての提案を述べてみましょう。
七歳で祝うのは早い子で幼稚園の年長さん、または小学校の一年生です。子供のことですから、この1年の差はかなり違うものです。
小学校に入った秋の方が身体がずっとしっかりします。つまり満七歳ですから数えの七歳でするより身体が大きくなったぶん我慢もききますし、聞き分けもよくなるからです。着付けをした方なら特にそう感じたはずだと思われます。
でもお家の事情もありますから数えの七歳でなさる場合も満七歳でする場合も様々です。中には、兄弟の都合に合わせたりして、2年続きでお祝いする方もあります。
子供の無事な成長を祝うのは一家にとり慶事ですから、大いに楽しまれ健やかなることを家族で祝いたいものです。
七歳の着物とは
さて、晴れの日に着せて上げる着物ですが、一般的にはどのように揃えるでしょうか。ほとんどはセットのように店頭で並べられています。
帯や小物類は別として、着物はどうでしょうか。七歳の身体に合わせて大人の訪問着の形のように裾模様に染められた着物がほとんどでしょう。
七歳に合わせた着物は大人と同じ本裁ちではありますが、身幅はみな五分細くなっています。袖丈も2尺です。子供にとっては充分な長さです。
背が小さいので、身長に合わせた感じの柄つけになっています。七歳用の柄つけになっているわけですから、この歳ぐらいしか着られません。昔は姉妹も多くて皆で着回しますから良かったと思いますが、この頃では一人っ子も多くてその時だけ着ておしまいということになりかねません。
また2人姉妹でも全く似合う色や好みが違うので別々につくる希望のお母様がいらっしゃいます。昔のようにお古とか、お下がりなどという方も少子化とともに年々少なくなってきました。
既に出来上がった着物を求める場合は簡単ですがおそらく子供の成長に添って着続けては行けません。
着物を好きになってもらいたいと思うとき、これではもったいないと考えるのです。形式だけで終わらせたくないからです。
七歳の着物への提案
私が七歳の祝い着を染めて欲しいと頼まれたとき、これらのことを踏まえて薦めている考えがありますので具体的に説明をしてみます。
まず長く着ることができることを考えます。そのためには一反の生地を使用するのは大人と同じなのですから全体に柄を付けるのです。これが私の考えです。それでは小紋と同じではと思われるかもしれませんが少し違うのです。
大人の身体のバランスで柄つけはできません。七歳の子の立ち姿を想像すれば、その身長にあわせた柄の付け方をしなくてはなりません。
小さな上半身にも着物の柄が綺麗にみえて写真を撮っても可愛らしく見えなくてはなりません。特に注意するのは袖山のあたりに見える柄です。
小さな肩のあたりも華やかにと気を付けます。お腹から裾までも距離が短いですから豪華にします。このように色々と考えますと全体にたっぷりと図柄を置き間隔も開きすぎないようにします。
見えないところや縫い込みに入る所にも柄がなくてはならないのです。柄の向きだけは逆にならないようにして全体に柄付けをしておきます。
七歳の子の身長に見合うだけの柄付けをする方がずっと楽なのですが、あえて私はこのように全体に柄を振り分けてたっぷりと付けていきます。
どうしてと思われるかもしれませんが、七歳の時に染めた着物をこの後も長く着てもらう為なのです。七歳の祝い着をスタートとして次の歳もまたその翌年もと、身長が伸びればだんだんと揚げを下ろしていきながら着てもらうためです。
そしていよいよ小さくなったら大人の着丈に縫い直しましょう。少女時代を通し着ることが出来るために一反に沢山柄があるのです。
七歳の時に作ってもらった着物は、派手になりすぎない限り大人になるまで着ていくこととなります。
私はこのようなコンセプトで創ります。お嬢さんやお孫さんのために七歳のお祝いの為に考えていられる方、こんな作り方もあると言うことをぜひ参考にして下さい。従来の形の他にもこういう方法があるということを。 かつて染めた七歳の着物の例を上に載せましたので参考にして下さい。
七歳の祝着その後
七歳のお子さんに、「大きくなったらもう一度仕立てなおすのでご自分でお持ち下さいね」と伝えます。高校生ぐらいになったら自分で持って来れます。実際に大きくなってお持ちになる方にお目に掛かるのはとても嬉しいものです。その時は目一杯に丈を出して仕立て直すのです。
作って頂いたお母様やお祖母様の暖かい愛情がいつまでもそのご本人に降り注いでいるようです。七五三は単なる形式的な祝い事ではなく、女の子がはじめて着物に目覚める機会としてあればと思います。着物への想いも共に育んで好きになればきっと次の世代にもつながるでしょう。