蚕を尋ねて(中編)


 前回の蚕を尋ねてのレポートから大分日が経ってしまいましたが、中編では私が見た蚕の体の中についてと、繭になり絹糸を生み出す過程について述べて参ります。



蚕の身体の中について


  蚕は4回ほど脱皮を繰り返し繭を作りだして行くのですがあの蚕の身体の中がいったいどうなっているのかが最も不思議に思えることでした。
 蚕糸試験場で説明をして下さったKさんは研究室で私の疑問に答えようと蚕をつまんでその体内を見せて下さいました。体内にはフィブロンセリシンと呼ばれるタンパク質がありこの中のフィブロンが生糸のもとになっているということでした。


 何匹もの蚕の体内を割いて見せて下さるのでしたが、蚕の身体の中の液体と白い繊維を示して下さるものの何だか凝視できず、何匹もの蚕を死なせるだけなので「もう良いです。分かりました」と情けないルポとなってしまいました。
どうして蚕は絹糸を作るメカニズムを体内に持っているのかとますます不思議に思えるのでした。

絹糸を作る蚕
蚕の身体を裂いてシャーレにのせたところ。
糸の元となる透明な物質がある。


 生糸のもとになるフィブロンのほかにあるセリシンという物質は普通の繭に30%も含まれていて、このセリシンの働きも私達に役立つ物質なのだそうです。人口皮膚や傷口を保護する医療面でのセリシンの利用開発の研究も進めているのです。

 蚕というのは、生糸を生み出すだけでなく色々と役に立つ偉いものなのでした。



生糸を生み出す過程


繭から生糸へ 繭をカッターで開いたところ。 繭から生糸へ、繭の形になってからはいったん乾かしてから固めて次は100度ぐらいの温度で繭を煮ます。
 そして溶けだしたセリシンを引き出して生糸にしていきます。
 それからヨリをかけて絹糸として出来上がるのですが、この仕事に取り組む熟練者が各地にはまだいられるそうです。
 この段階は今回のルポでは見ることが出来ないので機会を作って現場に出向き次にレポートしてくるつもりです。

 繭の出来不出来によっても違いますが、一つの繭から取れる糸の長さは1200メートルぐらいだそうです。
 一枚の着物を作るには約2600粒もの繭が必要なのですから蚕には本当に感謝しなくてはならないと思います。

 次回は、私が最も気になる現在の日本における養蚕の現状について述べて参ります。

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