レトロな着物は80%


 古い着物が見直されています。最近は古着屋さんも若い方達で賑わっているようです。歌舞伎などへ行くと、たまに見かけるのは、いかにも昔の着物を着て上から下まで独特の雰囲気で装っている方がいらっしゃることです。
 着物姿をひとつのファッションと考えて、特に古い着物で固めて独特な装いを凝らして目立つようにしているのも若い方の特権のようでもあります。
 それはそれで、眺めていると着ている方の個性を感じておもしろいのですが、時には周りから浮き上がっているような場合もあります。
 今回の話では、昔の着物や帯を現代に甦らせて素敵に見せるのはどのように工夫したらよいかを考えて行きたいと思います。



基本をおさえる


1. 古着を買うという事

  •  何のためにリーズナブルな古着を求めに来たのかということをもう一度よく考えましょう。あまりにも自分のサイズと違いすぎて無理があったり、シミや汚れなどのダメージが大きいなら、時にはあきらめる勇気も必要です。
  •  わずかな寸法のお直しで直るのであれば良いのですが、全体を縫い直さないと着られないとなると洗い張りの上、縫い直さなければなりませんから費用もかかります。
  •  着物は着物自体が素敵なのは勿論ですが、同じぐらいに大事なのは、その着こなし方にもあるのです。
  •  それには着られる方のサイズによく合っていることが前提でそこからがスタートです。あまりにも無理なサイズの着物はどんなに気に入った柄でも避けましょう。尚、帯にも同じ事が言えます。昔の帯は総じて短く、今の締め方には丈がないので締めにくいのでそこをよく確かめましょう。


2. 寸法について

  •  昔の着物はほとんどが小さくて丈もなくて、つんつるてんである場合が多いのです。裄も短くて、ここが最も気になるところです。気に入ったものがあればまず着てみて、どこがどの程度足りないかよく見ることと、寸法の直しが可能か、縫い代があるかなどを確かめることです。まずどんな着物でも、自分の寸法に合っていることが大事です。そして分からなければ専門家やお店の方に相談してみましょう。


3. 格合わせについて

  •  着物と帯との格の合わせ方は古い着物も新しい着物でも同じです。着物の種類、帯の種類も色々ですから着物に詳しい方に相談しながらするとよいです。古い着物の場合は新しい着物以上に組み合わせは難しいし着たら目立ちますから、格合わせがちぐはぐにならないように気をつけましょう。



 寸法と格の合わせ方ができていればまず合格です。それでは次に着こなし方についてとコーディネートについての提案を述べてみましょう。私が気を付けていることが幾つかありますので参考になればと思います。



アンティークな着物を着こなす


 アンティークな着物を着た方が、なんだか近寄り難くて異様な雰囲気を醸し出しているように見えたことがありませんでしょうか。実はこの点が今回一番お話したいところです。

 昔の着物や帯を引き立たせるには100%昔の物で身体中を覆わないようにしてみたら良いと思います。全体、上から下まで足袋の果て、小物から持ち物までを昔の物で装うと芝居から抜け出てきたような、または昔の人が甦ったような、ややもすると、おどろおどろしい感じに見えてしまいがちです。かび臭い雰囲気にもなります。

 現在にはない素材や柄ゆきが素敵と思い、身に付けているわけですから強調させるのは重点的に、着物や帯、羽織など全体から見て多くても80%ぐらいに留めて置いて下さい。どこか人目を引き「昔のはいいわね」と言わせるためにもやりすぎは禁物です。

 昔のものを活かすには、現代の着物のスタイルの中で、古い帯や着物を上手く取り入れて融合させるセンスが大事と思います。

 それこそが着物のコーディネートの妙でしょう。よく着物のことを知っていないと難しいかもしれませんが、今この文章を読んでいる着物通のあなたになら出来るはずです。
 昔の着物が素敵に見えて現代の着物姿の方々とも溶け込み受けいられて、誉められるような装い方が出来れば最高です。

 何気ない現代の紬の単衣にアンティークな帯を合わせてみました。帯は昭和始めの頃の品で現代では見かけられない帯です。

単衣と絽の織名古屋帯
絽の織名古屋帯(撫子の柄)6月の装い


アンティークな名古屋帯
絽の織名古屋帯(麻の葉の柄)9月の装い
この帯締も、アンティークな品です。



アンティークな着物とのマッチング


例として、私も今まで、このように昔のものを活かしてきましたのでご参考までに。

 1. 現代の夏の振袖に昔の夏の絽の丸帯を組み合わせる。

 2. お正月の若い人の小紋に昔の松竹梅を刺繍した名古屋帯を組み合わせる。

 3. 昔の紬の着物に現代の季節感のある染帯を締めてみる。

 4. 昔の刺繍の半襟を無地の着物の時に合わせてみる。

 5. 小物としてかなり昔のビーズのバッグを用いてみる。

 6. 昔の絞りの長いおおらかな道中着を来て出掛けてみる。

このように今はもう作らないであろう着物や帯などを色々な機会に活用させて、現代の着物生活にマッチングさせられるのは嬉しいことです。



まとめとして


 レトロな着物ブームです。昔のものを大事に思うのは素晴らしいことです。でも実際に着てみたい、締めて見たいと思えば様々な問題も出てきます。
 寸法、仕立て方、素材の耐久性など気になることばかりでしょう。素材や柄はそのままでも気持ちよく着たり締めたりするにはそれなりの工夫が伴います。
 現代の智恵と技術でいろいろと補う事は可能ですから、着物のことをよく知っておられる方と相談して昔の着物が素敵になるように着こなしてみてください。
 昔の着物それ自体がインパクトの強い物です。上手く今の着物ライフに組み込むのは最後は貴方のセンスなのです。
 くれぐれもやりすぎに気をつけて、20%は現代の感覚を取り入れてみることです。着物の世界も「温故知新」というところでしょう。

20-25toumei.gif

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