アースカラーに学ぶ


 私達は様々な色の着物を着て楽しみます。着物は形が同じですから、色や柄、そして材質を違えて好みに合わせます。
 百枚あればそれぞれに色も違い、なかなか同じ色の着物に出会うことはありません。ここでは着物に使われる色についてお話をしていきます。



アースカラーとは


 誰でもがすでに知っているとは思いますが、アースカラーというとどんな色を思いますでしょうか。地球の色、大地の色、空の色、草木、山、水など自然界に見られる色は皆アースカラーと呼べるでしょう。
 一般にはこれらの色を示すと思いますが、もっともっと広く考えれば花の色、動物や昆虫、魚など自然界に存在する色は総じて地球という星に生まれた色ですからこれら全てをアースカラーといっても良いでしょう。
 つまり私達が目にする、または目に映る自然界の色は全部がこの地球の色なのです。そして分類すれば、それぞれが持つ固有の色の種類があって私達はそれらから色々と不思議な色の在り方も教わる事が出来ます。



不思議な色わけ


 土の色、鉱物の色、つまり天地の色、草木の色は大体決まっています。そして海や滝、川、湖、なども色の範囲が決まっています。 花の色は多岐に渡ります。昆虫や鳥、魚には思いがけない色に出会う事があります。ほ乳類の動物の色は特定の色の範囲が決まっているようです。
 このように沢山の色が散りばめられている自然界のなかでも分類すれば大体の色数のくくりがおのずとあるのが不思議です。



色の名前について


 色の名の呼び方についても、とても興味深いものがあります。まず和名と洋名があります。日本に定着しているカタカナ名の呼び方もありますので、これらも交えながら色の名称について、そしてその理由についても考えて見ましょう。
  色名については数限りなくありますから、ここではよく着物に使われる色の呼び名について絞ってみます。
 何となく言っている色の呼び名にしても人により少しずつイメージが違っているようです。その点も改めて考えてみましょう。アトランダムに記します。色の名前ばかりが知られていても実際にどんな色のことをいうのか、よく聞かれますのではっきりとその由来を出来る限り説明します。



着物の色によく使われる名称


 ブラウザやOSの種類、モニターの設定によって色の誤差が出ますので、大体の目安にして頂ければと思います。



1,空や大地の色から

「曙色、または東雲、しののめ色」
明け方の東の空の色、着物の裾を白く残し上部を紅、紫、藍等で次第に濃く暈かしながら染めて行く。
 
「時雨色」
時雨に打たれて色づいた草木の葉の色、晩秋から初冬にかけての通り雨。
 
「水色、水浅葱、水縹」
水の色を表す昔からの呼び名、それぞれ水の色ではなく水で薄めたといった修飾語。
 
「灰色、消炭色、墨色、薄墨色」
灰色は鼠色のこと、消炭色はチャコールグレーのこと、墨色は煤から作った黒い顔料の色でそれを薄めたのが薄墨色、墨染めは僧の着物の色を指した。
 
「漆黒色」
真っ暗闇の色、ほとんど黒に近い。
 
「緋色」
炎の色、わずかに黄味を帯びた真っ赤な色。
 


2,草木の色から

「萌木色」
春先の萌えいでる黄味の緑色。
 
「若草色」
芽吹いた若い草の黄緑色。
 
「草色」
夏草のような濃い緑色。
 
「紅葉色」
紅葉したもみじの色。
 
「朽ち葉色」
葉が落ちて朽ちた色を指すが朽ち葉48色というように様々な朽ち葉を指す。
黄朽ち葉、赤朽ち葉、青朽ち葉など。
 
「亜麻色」
灰色がかった黄色。
 
「生成色」
自然のままの繊維の色。
 
「檜皮色」
檜の樹皮のような暗い灰色がかった茶色。
 
「樺色」
桜の樹皮のような赤みがかった茶色。
 
「青竹色」
若い竹の色、若竹色ともいう。
 
「煤竹色」
「老竹」と同じ煤けた年数を経た竹の色。
 


3,花や実の色から

「桜色」
とても薄いやや紫味を帯びた白に近いほどのピンク。
 
「藤色」
やや青みを帯びた薄い紫色で藤のつく名の色は様々あります。
藤紫、藍藤、薄藤、大正藤など。
 
「山吹色」
少し赤みがさす黄色、小判の色とも例える。
 
「牡丹色」
紫味の濃い赤い牡丹の花の色。
 
「菫色」
菫の花の色、少し青みの紫。
 
「薔薇色」
やや暗めの濃い赤色。
 
「橙色」
橙の実のような鮮やかな黄赤色。
 
「蜜柑色」
温州みかんの黄色い色。
 
「柿色」
赤みのオレンジ色で色々な和名がある。照柿、洗い柿、紅柿など。
 
「栗色」
栗の皮の茶色をいう、栗皮茶とも言う。
 
「茄子紺色」
茄子の皮のような紫味を帯びた紺色をいう。
 
「芥子色」
カラシナの花の色濃い黄色。
 
「小豆色」
小豆の色でくすんだやや紫味のある赤い色。
 
「山葵色」
すりおろした山葵のような色。
 
「茶色」
茶色系一般の色をいう。焦げ茶、金茶、団十郎茶など多くの茶系の呼び名がある。
 
「藍色」
藍で染めた鮮やかな藍色。
 
「納戸色」
暗い灰色のかかった藍色を指す。
 
「紺色」
藍染めの最も濃い藍色で鉄紺、紫紺、留紺などがある。
 
「鈍色」
青みの灰色。
 


4,鳥や動物、昆虫の色から

「鴇色」
トキが飛ぶときに見せる風切り羽の色でピンク色ですがトキが絶滅してしまうとこの色も見られなくなるでしょう。若い女性の着物の色にしばしば鴇色として用いられる。
 
「翠色」
カワセミの雄の持つ羽の青みの強い翠色のこと。
 
「鶯色」
鶯の羽のくすんだ黄緑色。
 
「鶸色」
マヒワの羽の色から薄く明るい黄緑色。
 
「鳶色」
トビの羽の色からつけられていて灰色を帯びた茶色。
 
「狐色」
狐の毛の様な色。
 
「象牙色」
象牙の色をさすがアイボリーとしても広く知られている。乳白色のやや黄味を帯びた色。
 
「鼠色」
白と黒との間の色で鼠色は48茶100鼠といわれるように江戸時代は流行色で、素鼠、茶鼠、藍鼠などがある。
 
「玉虫色」
玉虫の羽の色は見る角度により翠色や紫色に見える。織物の生地の色に用いられる。
「海老茶」
伊勢殻のような暗い茶色をさす。女学生の袴の色として広まった。
 
「鼈甲色」
ウミガメの一種タイマイの甲羅の色で装身具に使われる。
 


5,土や石の色から

「弁柄色」
鉄分を含んだ赤い土の色。
 
「黄土色」
黄色の土の色。
 
「砥粉色」
刃物をといだ時にでる砥石の粉の色。
 
「煉瓦色」
屋根瓦などに使う粘土を焼いて赤っぽくした色。
 
「青磁色」
淡い灰色がかった緑色。
 
「群青色」
青がたくさん集まった色でもとはラピスラズリの青い色。
 
「金色、銀色」
金は金色色、銀は白銀色、銀鼠色など輝きや白に近い色として様々な形容に使われる。
「鉄色」
黒金といい鉄分を含んだ磁器の色、鉄の焼き肌の色。
 
「錆色」
鉄などが錆びた色をいうが暗くくすんだ色をいう。
 
「鉛色」
青みの灰色を表す、重苦しい色。
 
「琥珀色」
琥珀は木の樹脂の化石の色、透き通った黄色い色。


 以上はよく耳にする色の名前ばかりですが、特に和名の色名を選んでみました。
 そして着物や帯の色を指すのに、通常よく使われる言葉ばかりですが、まだまだ面白い言い方がありますし、洋名の呼び方も入れれば限りなくあります。
 私達はこの地球の大地や自然界の動植物から素晴らしい色を見せてもらっています。
 これからも素敵な色の名前と不思議な色を織りなす自然界の色の数々を学んで行きたいものです。 そしてその中から好きな色を身に付けられる幸せを喜びとしたいのです。 色の名前を多く知る事により暮らしも楽しいものとなる事でしょう。

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