初夏にふさわしく
初夏とひとくちに言いますが何月の事を差すでしょう。ここでは4月の最後の週から6月の終わりまでと限定して話して行きましょう。もう少し具体的にいいますとゴールデンウィークの始まる前後からと覚えて下さい。今回は初夏にふさわしい着物について述べたいと思います。
初夏に着る着物
初夏は一年中でも緑の最も美しい季節でまた気持ちのよい頃でもあります。青葉若葉がそよぎ花も多く咲き揃い人も活動的に動ける季節です。
7月と8月は盛夏で、着物もがらっと変わるので分かりやすいのですが、6月までの初夏はお天気も目まぐるしくかわり気温も日によっては10度位もの差があったり、汗ばむような夏日の日もあれば肌寒かったり5月には嵐もあり風や雨に見舞われることがありますから着る物には困ってしまいます。
着物の種類も最も多く着る季節です。そしてお出かけもぐんと増えますし、催し物も多い季節ですから出掛けるたびに、どの着物にしようかと天気とにらめっこするのです。
初夏に着る着物の種類
袷 5月いっぱいまでは袷を着てよいことになっていますから、袷もまだしまうことができません。
紗袷
5月に紗袷を着るのは究極のお洒落ですからこれこそ最も5月に相応しい着物でしょう。お持ちの方はせっせと5月に着用してください。しかし晴天の日に着るようにして下さい。紗袷の生地は雨に濡れると少し縮みます。これだけは注意して下さい。
単衣
とても暑くてと感じる日には4月の終わり頃からは単衣仕立ての着物を着ても良いと思います。6月いっぱいまで着て良いです。
さて、この3種類の着物の種類が交差する初夏ですが、もう少し詳しく知るにはレクチャーの中の「光と風のキモノ」で紗袷の説明をしています。また「単衣を着る時期」で表にして詳しく説明してあるのでこちらも併せて参照してみて下さい。
5月の最後の袷で気を付けること
最も多く悩むのが、袷を着ても良いと言われている5月に暑苦しい袷で、さわやかにならないからどうしようかという事です。
やはり真冬に着ていた重苦しい感じのする生地や、5月に合いそうもない柄は避けたいと思う方がいらっしゃるのも事実で、おかしくないかという相談をよく受けるのです。
確かにすでに散ってしまった桜の柄の着物や、いかにも冬模様や新春の柄などは着たくないと言う気持はよく分かります。このような時には季節感のない織り物や、季節の柄ではない小紋などを活用されてみてはいかがでしょうか。
また反対に花柄だけではなく、爽やかな、いかにも5月らしい色合いの着物や帯で装うのも素敵です。数ある袷の中にはそんな季節に合いそうな着物や帯も持つように心掛けておきましょう。
帯は、やや軽やかな雰囲気に見えるものがあるとよいです。この季節に最後まで締められる素材として塩瀬がありますから、季節の柄の染帯としてあると重宝致します。もちろん紬や織の帯も良いです。このように5月に袷を着るときには工夫してなるべく見た目が重苦しくならないように心がけましょう。
6月に入ったら
さて6月ですがこの月は単衣と薄物が混ざり合ってしまう月です。基本的には単衣の着物を持っていれば小紋であれ訪問着であれ心配はありません。しかし蒸し暑く気温も高い日には思い切って薄物の着物を着られても良いです。
この時は生地は絽縮緬、絽、夏向きの絹芭蕉のような紬などで、まったく目のあらい紗や紋紗はやはり7月まで待ちましょう。絽には縦絽や紋絽、段絽など色々な織り方がありますが紋紗ほど透けてはいませんから6月の暑苦しい日には着られても良い材質でしょう。この頃はあまりありませんが絽縮緬なども6月にふさわしい生地で雰囲気があって素敵です。
このように初夏に着る着物の材質はかなりの種類がありますのでもっとも難しいかも知れませんが、着物好きな方々の腕の振るいがいのある時季でもあり、お洒落が楽しめる季節と思ってお天気に合わせて出掛ける場所に合わせてと苦になさらずに楽しむようにして下さい。