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なぜ振袖を着るの？
以前に高校生ぐらいの方から、成人式にはなぜ振袖を着るのかという質問がありました。全く当たり前なことなので不思議にも思わなかったものですから、この質問には少々驚き、戸惑いました。そして過去の成人式はどうであったかと思い出してみると、それなりに少しずつの変化はあったように思われます。
私が振袖を意識し始めたのはやはり自分自身が二十歳のころでしょうか。昭和３０年代も終わりの頃でしたが、その当時は中振袖が主流で今のように３尺もある袖は大振袖と言われ、ほとんどが２尺５寸の袖丈だったと覚えております。
もっとも日本女性の身長が１５０cm台でしたから中振りでも充分に長かったのです。その後、友禅の振袖の次ぎには絞りの振袖が流行り、２枚目の振袖を作られる方もいた時代ですからこぞって絞りの振袖をつくったものです。
次には絞りと友禅が施されている振袖も流行りました。それから無地風のものや大きな加賀紋をあしらった暈かし染めの振袖などがありました。
現在は友禅の振袖が多いと思いますが、型染めから手描きの本格的なものまで多種多彩です。刺繍を施された物にもミシン刺繍のようなのから、日本刺繍の手刺繍もあり一口に振袖と言っても材質も価格も様々です。
最近では着物自体が分からなくなった親御さんの為か、売り手の都合でするのか振袖一式を何十点セットと称して肌着から紐から小物、長襦袢、本体の振袖、と袋帯、足袋、バックなど全てをひっくるめて売る、セット販売なる販売方法がとられている売り方が多いようです。
一見、親切なようで、売り手も買い手も良いようですがちょっと嘆かわしい売り方と求め方だと私は感じております。
それではなぜ振袖を着るの？というところから説明しなくてはなりません。質問は簡単なのですが答えて納得していただくには大変です。
振袖って何？
どこの国にもその土地に育まれた民族衣装と言う物があります。日本人であるなら民族衣装というのは着物のことです。
長い年月の間に着物も色々な変遷を過ぎて今の形になりました。そして女性が生まれてから各年代に合わせて、また未婚の頃を過ぎ既婚者となることによっても着物の形が変わって参ります。
三歳の頃の祝い着、七歳の頃の祝い着、そして十三参りの時の着物を経て十代が終わり二十歳になり、いよいよ大人の仲間入りをする成人式を迎えることになるのですが、この時に振袖で女性は成人式に臨むのが慣わしとされています。
節目節目に折々の着物を着ますが、振袖はお嬢さんの時代を表す未婚の方の正装であります。つまり民族衣装としての着物の位置付けでは未婚女性の第一礼装に当たります。
冒頭の高校生への答えは「日本女性の未婚の方が着る第一の衣裳で正装である」ということになります。
振袖の考え方
いつの頃から振袖は二十歳の成人式に誂える着物という考えが定着してきました。従って誰でもまるで制服のようにこぞって振袖でお式に出掛けるようになりました。
そして何でも袖が長ければ振袖であると言う考えで振袖の本質もたいして気にせずコスチュームの１種程度にしか考えないもの、成人式のイベント用の衣裳として七五三の衣裳と同じと考える方も多く、貸衣装で済ませれば良いしそれで写真を撮れば記念になるし、もうそれっきり着物は着ないだろう、着物を作る費用で外国旅行へ行くから着物の費用はそちらに回すなどなど様々です。
それぞれのお考えの前にちょっと立ち止まって振袖を着る意義、振袖を揃えてあげる意義と併せてどうぞ考えてみて下さい。
「振袖って何」のところをよく理解してから着物を求めて下されば良いと思います。そしてその理解のもと、ご自分に相応しい振袖を選んで頂きたいのです。ただ業者の宣伝にだけ乗せられた求め方を避けて下さい。そうすればおのずと振袖選びも慎重になりますでしょう。
振袖はお家の宝
もしご家庭にお母様やお祖母様の着た振袖が残っていて充分に着られそうであれば活用してください。当節はレンタルが多くて振袖を作る方ばかりではありません。それも合理的でよいと思われる方は良いですが、もし家に振袖があれば着物だけでも帯だけでも活かして上げましょう。
お母様やお婆様の若かりしころの振袖や帯が成人式を迎える娘に着用できればこんなに良いことはありません。
取り出していろいろ問題があれば信頼出来る専門の方に相談して見ましょう。決して古いからと考えずその着物を誂えて下さった方がいらしたことを思いだして見て下さい。
最近は成人式で荒れているニュースを見る事があります。振り袖は第一正装ですから品と格を着物にも着る方ご本人にも自覚していただきたいのです。
次回は振袖の誂え方と求め方について具体的に話しますのでこれから作ろうとお考えの方は参考にして下さい。
