若くったってコート
レトロな雰囲気の着物に興味を感じて、アンティークな着物が若い方にも流行り、この頃ではちらほらと個性的な装いも目立つようです。
着物を着た時にコートを着るということを、若い方はあまり考えない事が多いのではないかと思います。暖冬が続いたせいか、羽織も復活してきて昔のように長い羽織を羽織る方々も多くなってはきました。
しかし羽織はあくまでも小紋や紬のうえに着る事が多くて、少しよそ行きな付下げや訪問着、正式な色留袖、黒留袖、ましてや振袖に羽織る事はありえません。
今回は若い方がコートのことを考えているのかどうかが気になるので、もしコートが必要かと気づかれた時に参考になればと思い、若い方向きに述べてみます。
振袖の時には
振袖を誂える時に、コートのことを考える方がいらっしゃるでしょうか。お母様や周りの大人たちが気がついてくれるでしょうか。今の時代ではなはだ無理でしょう。
お嬢さんたちがある日突然に着物を着ること、つまり振袖を着ることになるので着物のことだけしか考えられないと言うのが現状です。
成人式は冬の厳寒期です。だれもがしている白くてふわふわの襟巻きだけをして寒さを凌いでいるようです。この装いは、もはやおしなべて同じでユニフォームのようであります。
美しい晴れ着の長い袖は寒風にひらひらと舞っていたり腰掛けると袖が床に着いていたりとして日頃着慣れない振袖ですからお袖をもてあましているようです。
どうして振袖を着たときだけコートを着ないのでしょうか。不思議に思われたことはありませんか。例えば素敵なフォーマルなドレスを寒い時に着て出掛けるとします。コートは当然考えることでしょう。若くったって冬は寒いはずだし、何か上に着ないと汚れると思うはずです。洋服と同じ事です。
振袖が他の着物と違うのは、形としてはただ袖の長さがとても長いだけなのです。普通の袖丈であれば帯付き姿だけでコート無しでは冬は出掛けませんね。着物のためにも、若い方もコートのことを考えて欲しいのです。
コートを着るために
実際にはどうしたらよいものでしょうか。新しく誂えて下されば理想的なのですが、なかなか現実にはそこまで手が回らないようです。そこで提案です。新しくなくても、着物からコートは出来るのです。
もし古くても、お母様、お祖母様の解いても良い着物があれば是非それを利用して下さい。新しい生地から作るよりは経済的です。若い方のコートは長さがたっぷり有る方が良いので着物分の生地があれば最適です。小紋でも無地でも良いです。出来れば紬類でないほうが良いのです。昔の着物が利用できれば言うことはありません。 再利用出来る物がないかどうぞ探してみて下さい。
そしてコートがあればお出掛けにも便利な事でしょう。若い方でも小紋も色無地も訪問着も着るときがありますね。いつもお母様のお若い時のを借りたりしても丈がとても短かったり裄が合わなかったりしますので、ご自分の着物の寸法に合わせて作る事をお奨めします。
着物にあった形のコート姿は見た目にも奥ゆかしくて素敵です。着物が大好きであればコートのことも考えてみて下さい。
コートの寸法と形について
若い方は振袖をはじめとして、帯の結び方が色々あります。ふくら太鼓、文庫など様々ですね。いわゆる道行きの形ですと、ちょっと後ろがつんと上がってしまうことでしょう。そして前の胸元あたりも上がってしまいます。ですから形としては道中着の形になさると良いでしょう。
道中着は襟元が着物と合わさる形なので無理がなく着るときも紐の部分で調節出来ますから、後ろでどんな形の帯結びにしようとも大丈夫です。
そして袖丈ですが振袖のお袖を畳むように入れるので1尺5寸位にしておけばどうでしょうか。訪問着も1尺5寸から2尺ぐらいまでいろいろだと思いますから、振袖から訪問着まで対応出来る袖丈はこれくらいが歩きやすいことでしょう。
お若い時は着物の袖丈も長めですからコートの袖丈もミセスよりは長めにしておきましょう。振袖を着なくなってから、袖丈は詰められたらよいでしょう。
お芝居や映画でお姫様が道中着姿で歩いているのをみたことがありませんか。お袖をしまい、きりりと道中着を着て着物を汚さずに歩いていますね。だらしなくなくて奥ゆかしい姿です。なによりも本人が安心して歩くことが出来るのです。
どうか着物を大切に考えるならコートは必要と思って心掛けてください。
なるべく長めで形は道中着、古い着物からで再生できるので是非試してみてください。
自分に合ったコートを持てば、冬場は自由に出掛けられます。安心してどこでも行ける事でしょう。
「振り袖にも着られる道中着」
つい丈の長さに作った道中着を着る人の身長に合わせて、同じ生地の腰紐で丈を調節しています。背中にゆとりが出来るので大きく結んだ帯もコートの中で納まります。一反分の着物から作ります。