晴れ着 晴れやか


 晴れ着とはどんな着物のことでしょうか。辞書で調べると「晴れの場所に着て行く服、晴れ衣装、よそゆき」とあります。晴れやかな日の為に着る着物全般を指して言うのでしょう。
 今回は一年中でいちばん晴れやかな、そして誰にとっても等しく訪れるお正月にテーマを絞って話しを進めようと思います。
 今はお正月と言いましても過ごし方は種々様々となりました。昔のように日本中均一なお正月風景では無くなりました。



元旦の装い


 かなり昔に戻りますが、と言いましても昭和の50年代までは、お正月の風景はまだ見ることが出来たように思い出します。
 大晦日には、早めに日本髪を結い上げた人が足速に家路に急ぐ姿が下町でちらほら見かけられたり、買い忘れたお正月の品を買う人がいたり、除夜の鐘を聴くまでは何となく慌ただしい空気が街の中にありました。
 年を追うごとに、大晦日はいつもの月末とそう変わらなく、静かで本当に明日は元旦かしらという感じになっていくようです。 最近はテレビでも見なければ大晦日の雰囲気も盛り上がらず淡々とした夜です。

 私の小さい時はどうだったでしょう。お正月の朝には、いつの間にか母が用意してくれた着替えるための衣類が家族全員の分揃っていて元旦の朝を気持ちよく迎えられました。
 何から何まで新しくて下着や履き物にいたるまでお正月を待って下ろすことで、気分がとても晴れやかに満ちていたものでした。
 着物や服は必ずしも新品ばかりではなく縫い直しのものであっても、まるではじめて目にする着物の様でありました。
 母親の甲斐性というのでしょうか、そのときどきの家庭の経済にあわせ子供達に用意してくれたのでした。
 今の母親達は当時よりもっと頻繁に衣類を買って日常的に子供に与えていると思います。昔は子供の数も多かったり今ほど経済も豊かではない中で、お正月ぐらいは、という気持ちだったのでしょう。 ですから尚更のこと、子供心に晴れやかな気分で元旦のお膳に向かったのでした。  



お正月こそ着物を着れば

お正月の着物 晴れ着
 やはり女の子は、お正月にきれいな着物に手を通してみたくなります。着るだけで嬉しくなります。
 大人たちに「綺麗ね」「可愛いわね」と言われてずっと着ていたいとも思ったことでしょう。 この時の経験は結構尾を引きます。
 子供時代に、お正月でもお祭りでも何か晴れやかな日に着物を着せてもらえた回数が多い子は大人になって着物が好きと再び思える要因ともなるようです。

 お正月の過ごし方も全く変わってきました。以前は元旦から家を空けてはいけないと親たちに言われました。2日にはお年始にいったり、仕事始めは着物姿で出勤という光景がよく見られました。
 この光景は、今ではすっかり見られなくなってしまいましたが、今思うと懐かしく思えます。

 民族衣装である着物、お正月にはぜひ着てもらいたいと思います。そして、たまには晴れ晴れと、晴れやかな気分で新年を迎えてみるのはいかがでしょうか。
 旅行に出られる方も多くなりましたが、お家で過ごされる方は着物で初詣というのも、よろしいかと思います。
 そういう方が増えて、いつまでも平和な日本のお正月風景であることが願いです。

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