夏はきりりと


 梅雨が明ければ真夏となります。「着物好きでも絶対に夏は着物は着ない」という方と「夏こそ着物が目立つ時、夏の着物が大好き」という方と2つに分かれるようです。どちらの言い分もよく分かります。
 汗をかくし手入れが大変、夏の着物はあまり持っていないし、というのが着ないと決めている方々の理由です。
 それに対して、夏の着物の素材や夏らしい柄が好きで、着る人も少ないから、よりお洒落が楽しめると張り切る元気を持ち合わせているのが夏の着物推進派の方々です。
 さて眺める方にとってはどうでしょう。暑いのに着物を着て偉いなとか、涼しそうで素敵とかすこし尊敬の入り交じった目で眺めるようです。 


昭和初期 絽単衣の麻の葉の着物と袋帯
昭和初期。絽単衣の麻の葉の着物に夏の袋帯
うちわを持った姿も、涼しげです。

 昔はクーラーもないのに夏だって着物だったはずです。その時代に比べれば今はどの建物に入ってもクーラーが効いているわけですから、昔よりずっと着やすい条件が整っています。着る気にさえなれば、思ったほどは辛くはありません。
 それでは、はたから見て夏の着物をきりりと涼しそう着こなすには、どのようなことに注意したらよいでしょうか。
  様々な角度から考えていきましょう。




着始める時に


 まず周りの環境を整えるところから始めましょう。今日着て行く着物を用意します。使用する帯締めや帯揚げも手元に用意します。履き物は事前に玄関に用意します。ハンドバックも出掛けるまでにしておいてさっと持って行けるように置いておきます。直前にお財布やチケットや細々とした物は慌てて入れるなどということがないように、入念に確かめておきます。
 そして着物を着る部屋は出来ればクーラーをかけてかなり涼しくしておきます。長襦袢、着物、帯、小物、をなるべく手の届く位置に置き、紐類も取りやすい所にかけておきます。

 さあ、部屋も涼しくなりました。着始めましょう。こんな当たり前のことですが、無駄な動きが多いと暑くなりますし、何かひとつでも用意を忘れると慌ててしまい立ったり座ったりと腰をかがめて着崩れの原因になり汗をかいてしまいます。
 全てのことを準備して速やかに1回ですんなりと着物を着ましょう。汗は出ないで、むしろ緊張感で毛穴が引き締まり暑さを感じなければベストですね。勿論、冬でもこういう風に用意すればよいのですが特に夏は無駄なく動いて着付けが出来るのが望ましいです。
 尚、着物に汗が浸みないように肌襦袢、または補正のタオルなどに汗の湿りをしっかり受け止める様にして着物や帯を傷めない様にしましょう。



コーディネート


 盛夏ですから夏は染め物も織物も涼しい感じの絽、または紗が多いでしょう。合わせる帯も絽つづれ、紗袋、絽の染め帯、羅の帯などですが着物と合わせてより涼やかに見えるようにして下さい。

最近の夏の帯は淡彩で白っぽいか、優しい色で無難な色と柄が多く見受けられますが、着物が白っぽい場合には少しぼけた感じがしないでもありません。
 きりりと見せるにはメリハリのついたコーディネイトがお薦めです。折角夏に装うのですから夏を思い切り楽しんだ装いにしたいものです。出来る限りのお洒落を楽しみたいです。
 つまらない組み合わせで、白い着物を来た幽霊みたいにならないようにしましょう。

絽塩瀬のアンティーク帯
矢絣の着物。帯は大きな朝顔の柄の
絽塩瀬(アンティーク)のコーディネト。
夏らしい組み合わせ。


 夏こそ腕の見せ所、自分のために最大のコーディネイトをしてみて下さい。帯締め、帯揚げも夏の素材で、帯留めは夏らしいデザインで、扇子も夏ならではのものがオススメです。
 着付ける時に大汗をかかなければもう大丈夫。出だしが肝心、すんなりと涼しい顔で出掛けましょう。



色の組合わせ方


 濃い地色の着物、例えば紺や黒、ダークグリーン、濃い鼠色などは夏には着るときりりと締まって涼しく見えます。逆に薄い色の着物にはこっくりとした濃い色の帯が映えるでしょう。
 帯締めの色もくっきりと帯に映える色使いにして、また夏の題材をモチーフとした帯留めを使うのもよいでしょう。アクセントになります。
 ある意味、夏の着物は袷より気を使うかも知れませんが、その分お洒落度も高く見えるので着た甲斐はあると思います。どのお席に呼ばれても恥ずかしくない夏の装いの一式があればもう安心です。夏の着物をきりりと着こなせば着物通として一人前です。

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