昼夜帯を楽しむ


 あなたは、昼夜帯という名前を聞いたことがありますか。どんな帯のことを指すのでしょう。 今回は、この帯について説明したいと思います。



昔の昼夜帯


 お祖母様のお持ちになっていた昔の帯を探せば、昼夜帯が見つかるかもしれません。両面に柄がある帯で、名古屋帯であったり袋帯の場合もあります。
 昔のものは、片面の柄が重くもう片面はやや軽い柄となっています。そして柄の軽い方は、大抵、黒の繻子で出来ております。どうして黒繻子かはわからないのですが、多分滑りが良く締めやすく、軽くもあったからでしょう。
 昔の帯はだいたいこんな風です。中にはご自分で仕立てられた形跡が残っているのもあります。

 昼夜というネーミングは、なかなか素敵だと思われませんか。随分と昔からある呼び方の様ですが、さしずめ今ならリバーシブルというところでしょう。片面が黒いので夜に見立てたのかとも思います。それに対してもう一方は華やかに昼を表したのでしょうか。
 いずれにしてもおおよそゆきの帯と言うよりは、毎日の着物の暮らしの中で、すこし砕けた遊び感覚の帯であると感じます。
 2枚の帯の表同士を張り合わせているので、腹合わせの帯とも言います。昔の方はどういう利便性を考えて昼夜帯を作ったのでしょうか。



現代の昼夜帯


 昔からある昼夜帯のエッセンスと遊び感覚を現代に生かして見ようと、私はかなり前から色々な種類の昼夜帯に挑戦し続けております。あくまでも両面使える帯であることが特長なのです。
 ただし昔のように片面が黒繻子ではなく、両面共がそれぞれ主役でどちらを締めても表に成りうるということです。その為に様々な工夫が必要です。
 まず締め易いこと、帯が重くなりすぎないことが大事です。それで素材を考えました。塩瀬を両面張り合わせると重く扱いにくくなります。
 塩瀬と紬、縮緬同士、金通しや銀通しの帯地などおよそ考えられる生地を使い何種類も作ってみました。袋帯と名古屋帯の昼夜帯です。

染袋帯の昼夜



「染袋帯の昼夜」

片面はポイントの大きな柄で更紗がのびやかにタレまで描かれています。
もう片面は全通しで、さわやかに水仙の花が全体に描かれています。



「染名古屋帯の昼夜」

片面が桜の花の全通し。
もう片面は紅葉の全通し。
両面で春秋を楽しみます。

染名古屋帯の昼夜

染名古屋帯の昼夜




「染名古屋帯の昼夜 」

片面は松竹梅の柄が摺泊の全通しで描かれています。
もう片面は青地に雪降る様子を表し、両面を合わせて新春の帯らしくなっています。



昼夜帯の使い方


 この帯の楽しさと便利さについてですが、何と言っても1本の帯で2回楽しめることです。旅行に持って行くには最適です。1本の帯が大活躍してくれます。
 両面が効果的にお互いを引き合うように染めてあるので、締めたとき、自分には見えずらいのですが、真横から見るともう一方の帯の色が見えてその効果が素敵に映えます。周りの人達を楽しませることとなります。

 私はこれからも柄と素材を工夫して創りながら、様々なバリエーションを広げるのが楽しみです。昼夜帯は、2本の帯を求める程の価格ではないのが嬉しいものです。市販では、なかなかお目にかかれないものですが、もし機会があれば是非チャレンジしてみて下さい。

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