アルバムを開く前に
令和の時代にあって、アンティークな着物や帯がもてはやされて久しくなりました。この時代にあって、昔の着物や帯が私たちを惹きつける魅力とは何でしょうか。
明治、大正、昭和初期の、特に日本が戦争に入る以前から戦後の復興期にかけてのアルバムをめくれば、時代と共に微妙に変化して行った古き良き時代の着物姿に多く出会うことができます。その時代からはノスタルジックな空気が漂ってきます。
大正13年「帰途を降る雪」少女画報
蕗谷虹児 協力:蕗谷虹児記念館
自由に、闊達に、粋に、モダンにと着物の柄やスタイルを楽しんでいた女性達の笑い声までもが聴こえてくるようです。着物にとっても良い時代だったのでしょう。
西欧の文化が女性たちにも広まり、洋風なヘアスタイルに着物姿も流行しました。小柄な日本女性が現代よりもっと大胆な柄を着物や羽織に配し、社会進出も始まり職業婦人などという言葉も生まれて来たのもこの時代です。
モガ、モボが流行った時代には着物と洋装が同じ写真のなかに混在していて、不思議な雰囲気を醸し出しています。子供や女性、男性にも日本と西洋の文化が入り混じった姿が見られます。衣食住のすべてが和洋折衷の時代の始まりだったのです。
今までムカシアルバムでは私の母の時代に残された大正、昭和初期の古いアルバムの中から、少しづつ着物姿や時代背景を紹介して来ました。
その後、昔の写真を捨てないでという呼びかけに対し、皆様から多くの協力を経て、古い写真を集め、ムカシアルバムを充実させて参りました。
我々がかつて過ごしてきた時代の着物姿を皆様の記憶の片隅に少しだけ留めておいてもらいたいのです。あの時代、女性達はどのように着物を着て、優雅に、そして活発に毎日を暮らしていたのでしょうか。
着物はファッションです。そして民族衣装でもあります。洋服ほど目まぐるしい変化はありませんが、やはり時代の流れと共に大きなうねりを持って変わっていきます。
私たちが培ってきた着物の良さを活かしつつ、時代にあった衣装としてより楽しんでいくために、かつての女性の着物姿からも学んで行きましょう。