足もとはしっかりと


 着物を着るにあたって面倒だと思われる原因のひとつに、歩きにくい草履があります。特に、痛いとおっしゃる若い方が多くいらっしゃいます。
 ここでは、初めてきちんと着物を着る機会がある成人式の日に焦点を絞り、そこから話を進めていきましょう。
 一から着物を揃えようとお思いの方、足もとのことも忘れずに考えてください。

セットでいくらと安易に考えずに


 振袖を揃えるのに、ひとつずつ考えるのはよく分からないし面倒なので、頭からつま先まで呉服屋さんまかせで、全部でセット価格いくらと提示されているのが最近は多くなりました。これだと売る方も買う方も簡単なのです。このなかに草履が含まれている場合はほとんどでしょう。それもバックとセットになっているケースが大半です。
 さて、ここが問題なところなのです。このようにセット価格で買われた草履の中には履きごごちが悪く、履く人の身になって考えられていない品質がよく見受けられます。

 成人式は七五三とは違います。小さな子なら足が痛くなれば抱っこして貰えます。大人は、そうはいきません。
 朝から一日中歩き回ることでしょう。歩いても痛くならない足もとがとても大事なのです。
 私が最も恐れているのは、この日一日で「着物は窮屈で足も痛くなるし、もう嫌」と思われてしまうことです。
 つまり足の辛さからの印象で着物を敬遠されることがあってはならないのです。草履の形をしていれば良いと言うものではありません。

 靴を選ぶ時と、同じことです。皆さんも自分の足に履いて確かめる事が必要でしょう。足袋を履いて草履を試してみる位の慎重さはあってもよいのではと私は思います。

着物 草履


振袖 草履


痛くない草履

 特に振袖を着るときは、かなりの重量を身につけるのですから、足もとはしっかりと安定していなくてはなりません。
 そうでないと、ちょこちょことヒヨコのようにおかしな格好で歩く姿になりかねません。




草履を選ぶときには


 それでは草履を選ぶときには何を基準に考えたらよいでしょうか。見ただけではなかなか分かりません。まず自分の足のサイズを伝えましょう。
 23.5位までなら普通のサイズの草履で良いですが、24以上のサイズの方は大きい草履を選んで下さい。
 甲が高い方、幅のある方は鼻緒を少しゆるめてもらいましょう。とても楽になります。
 ゆるめすぎてしまうと足が前の方へいってしまい、かえって履きにくくなりますので加減して下さい。そして草履の台に使われている素材が粗悪でないものを選んで欲しいのですが、一般の方には分かりませんので、信用のおける草履の専門店で選ぶのが無難です。値段で判断するしかないのですが、やはりとても安価なものは履きよいとは言えません。
 それから草履の高さにも注意して下さい。振袖は袖も長いので普通の高さでは合いません。5cmぐらいはあったほうが立派です。いずれも専門店で相談なさると安心です。
 私はお振り袖の注文を受けると着物の色に合わせて皮の色を選び足のサイズを考えて注文を出します。
 佐賀錦や織りのものにはそう背が高いものがないので皮で好みの色と高さを決めています。
 合皮はどうしても固く、何年か経つともっと鼻緒が固くなり履きにくくなります。その点、皮の方が足に馴染みます。
 適正な価格であれば専門店で求めることをお薦めします。バックとセットでとても安いものばかりにつられないでください。もっとも良い品のセットもありますのでよく見極めて下さい。



足にあった草履を履けば


 足に良く合う草履ほど楽な履き物はありません。よく着物を着られる方がその理由の中に足が楽だからというのがあります。
 私の体験からも前日に忙しく歩き回った時に、着物だった日は翌日疲れが残りません。草履を履いていたせいだと思います。履いていること自体足のつぼを刺激して疲れを取り除いてくれている気がしてなりません。
 冬の寒い日に、いくら足袋を履いているとはいえ、寒いとか冷えるとかそれほど感じないのも不思議です。
 着物を着始めるとき、足もとのことも共に考えて頂けると、いっそう着物の生活が活動的になるでしょう。履きやすい靴を選ぶと同じように自分の足に合う草履に注意を向けて欲しいのです。

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