裾廻しに釘付け
お初釜の頃には無地の紋付きは、着る機会も多く大活躍です。無地を新調する方は何とか素敵な色を探したい、ありふれていない色にしたいとお考えのようです。
生地の選択から色を決めるまで相談に乗ることがしばしばあります。そんなとき私が提案していることがいくつかありますので、それについて述べてみましょう。
色無地を誂えるとき
色無地を染めるときには、理想では3回は染め変えが可能な生地を用いるということです。 無地は染め変えることができますから、なるべく上質の生地を選びたいものです。
それから、反物の長さは1反の3丈物の生地より裾廻しの分も取れる4丈物の長さがあるものをお薦めします。どうしてかと言いますと、最近は無地の紋付きを注文なさる方は、ほとんどがお茶事に使われる方が多いからです。
昔は誰でも、無地の紋付きをとにかく最初に作る方がほとんどで、訪問着や付下げがなくてもまず無地の着物を作ったものでした。このごろはお嫁入りのために無地を作るということもすたれてしまったようで、何が何でも無地だけは親が持たせて嫁入り支度ということはなくなりました。
それで近年では、無地を染められる方はお茶事の為にという方ばかりとなりました。
お茶事に使われる着物はとても傷みます。裾が切れることもあります。従って質の良い無地用の生地が好まれます。普通の裾廻しの生地ですと表側よりは薄い裏地なので余計に弱いのです。
そこで4丈物の生地で作れば表の本体と同じ生地ですからより丈夫ですし、重みもあるので着た感じもどっしりとして良い感じです。私は色無地にする生地は、色留袖に使う生地を薦めております。
裾廻しの工夫
さてここからが本題です。せっかく4丈物の生地を使うのですから、無地の着物も他の人よりはひと味変えたいものです。表と同じ生地が裾廻しになるのですからここで裾廻しに柄を入れてみます。
特にお茶席では立ったり座ったりお運びをしたりといたしますから、座っているお客様の目には動く度に少しひるがえってみえる裾廻しが目に入って参ります。
この裏になる裾廻しに柄が少しあると、とても奥ゆかしいお洒落に見えます。
どんな柄を入れるかはその方の雰囲気に合わせてみます。具体的にいえば、吹き寄せの柄、宝づくしの散らし、着る方が好きな花の柄等です。それから遠山や雲を暈かしにしたりと様々に着る方に合わせて考えます。素敵な柄が歩くたびにちらっと見えると裾廻しに目が釘付けになってしまうことでしょう。
そんなお洒落を楽しむのも、この頃の無地の作り方ではないでしょうか。染め直す時には、柄を生かしてまた違う色にすることができます。裏にお洒落をして遊ぶのは着ている本人には見えません。他人の目に飛び込むのですから効果的です。
ぜひ良い素材の生地で4丈物の約16メートルある反物を使ってみて下さい。素敵な色無地ができることでしょう。
ただし染め方は引き染めでお願いしなくてはなりませんので、この点は注意してください。